昔まだepta(メイン世界観)が無い時、実デのあるゲームの世界(eptaで言う外の世界)で創造神は一人の人間の女の子に恋をしました。彼女と一緒に絵本を作って遊んだり、おままごとで人間の真似事をしたりして楽しい日々を送っていました。

でも、女の子は人間の男性と結ばれました。創造神は問いました。「何故私ではいけないのか」と。女の子は「あなた達と私達では住む世界も考えも何もかもが違い、子供を作ることもできない。私は家族の為にも彼と生きなければならない」と言いました。

彼女は少し間を置いてから「…それにあなたは神様だもの、こんなちっぽけな存在が独り占めして良いものじゃないわ。皆のものだもの。…仕方ないの」と続けましたが、もう創造神には届いていませんでした。

人間とpkmnが結ばれていた時代もあった。なのに、何故自分では駄目なのか。いくら考えても肝心な部分を聞いていない創造神に答えは出せませんでした。

女の子や他の人間達とふれあう中で人間に近付きすぎた神は、ある時自分の中にどす黒いものがあることに気が付きました。

答えが分からず原因も無くせず苦しんでいた神には、まるで自分が作った世界が自分を裏切っているように見えていました。世界に干渉しないと決めていたのに、いつの間にか一人の少女に夢中になり、今は出会う前に戻っただけなのにという思いが余計神を苦しめました。

そして何より、心から愛した少女と世界を心の底から憎んだことが嫌で仕方がありませんでした。今までどんなものより純粋で、染められずにいた創造神の心は黒く、病んでいました。彼は初めて「自己嫌悪」に陥ったのです。

何も信じられず、何も愛せず、何も許すことができなくなった神には、たった一つだけ、一冊の絵本だけが心の拠り所でした。それは昔少女と一緒に作ったものでした。思い出の中の少女に想いを馳せながら、神は「人間とpkmnが結ばれる世界があったなら」と夢を見ました。

絵本に沿って、大陸や国を作り……ああそうだ、人間とpkmnの子供を作らねばならないな。二つの種族の特徴を持って生まれてくるハーフだ、これで文句は無いだろう。この世界は人間も皆幸せになれる。ああ、楽しい、これでようやく彼女も………………………………。

創造神が自分の体に違和感を覚えたのは、絵本の世界が出来上がってからでした。今回は考えなくても答えは出ました。彼はこの世界の創造神なのです。それなのに世界を一つ作ったあとに、もう一つ作ってしまったのです。複数の世界を維持させることは簡単では無かったのです。

禁断の扉を開けてしまったことを知りながら、創造神は微笑みながら絵本の世界を見つめていました。彼はもうどうでもいい気分でした。自分が死んだらこの生まれたての世界も死ぬんだなあ、と他人事のように笑いました。正気ではありませんでした。

絵本の世界は<epta>と名付けられました。二つ目の世界として無理矢理作られた<epta>は未熟であり、その小さな世界はまるで箱庭のようでした。不完全な<epta>は最初は生物もすぐに死んでしまい、世界としての機能も十分に果たしていませんでした。

困った創造神は、さらなる禁忌を犯しました。それは、「この全てが整った美しい完全な世界から皆を招待すればいい」というものでした。実際には一つ目の世界の時間を止めて、魂だけを<epta>に送るというものでした。

時間を止めるだけにして<epta>を動かせばいいという考えはありませんでした。今の創造神にとっては、"自分を裏切った憎い世界"よりも、自分の理想通りに作られた<epta>が愛しくて可愛かったのです。

「完全な世界」で生まれた生物の魂は、「不完全な世界」でも生きていくことができました。死んだらまた「完全な世界」へ戻って来る、「不完全な世界」で経験したことは夢だったのだと錯覚させてはどうかと、創造神は次々に世界に嘘をついていきました。

<epta>は少女と作った話の通りに歴史を刻み、現在も多くの生物が生息しています。「完全な世界」から呼ばれた魂は「不完全な世界」で家族を作り、「不完全な世界」で生まれた生物はまた、「不完全な世界」へ戻ってくるのでした。

しかし、いつしか創造神には嘘しか作れなくなっていました。彼は自分の力がほぼ失われていることも知りながら自分に嘘をつき、時間が止まっているはずの「完全な世界」が少しずつ動いていることも見ない振りをしていました。

前のように生物に力を授けることも、言葉を紡ぐことも、移動することさえもできなくなっていました。そんなある日、創造神はまた夢を見ました。今度は想像ではなく、少女が昔の姿のまま、自分に話しかけている………。

創造神は眠りについていました。

少女との会話はすぐに終わってしまいました。創造神自身も一瞬の出来事のように感じていました。重い身を起こした彼は、辺りを見回してもどこにも絵本が無いことに気が付きました。